高野七口の女人道・黒河道の一本杉

一本杉は女人道で生きている目印

黒河道は女人道と合流するので、この一本杉は黒河道というか女人道というか、両方というかですが見事な一本杉です。

一本杉は、今から550年以上前に植えられた街道杉の名残のひとつです。
今のようにスギやヒノキが植林される前は、 落葉広葉樹を中心とした原生林が広がっていたと考えられています。そんな中に、すくっと立つ杉の木は遠くからでも簡 単に見つけることができ、 旅人たちの目印として非常に役立ったと思われます。この一本杉から、子継峠を経て、麓の橋本まで高野七口のひとつ黒河道と呼ばれる街道が伸びています。

橋本から最短距離で高野山に登ることができたことから、生活物資が多く運ばれた道だと謂われています。街道の周辺の家の軒先には、「雑事掛け」と呼ばれる 農作物が吊るされ、 高野山に登る人々がそれを背負って、奥之院のお大師様まで届ける 「雑事登り」 と呼ばれる風習がありました。

一本杉は女人道で生きている目印として旅人の役に立つよう、550年以上前にこの場所に植えられました。
杉は非常に高く、真っ直ぐに育つため、遠くからでも簡単に見つけることができます。特に明治時代(1868-1912)より前は、この地域においてたくさんの自生樹林が木材として伐採され現在ほど高く密集して育っていませんでした。数世紀の間、旅人や巡礼者は、合流場所や、子継峠と転軸山の間の森林に覆われた斜面の道案内をする目印として、一本杉を利用していました。

目印となる杉と同じように、高野山の至るところで杉の木立を目にする機会が多くあります。三本杉として知られる、3本の杉の古木が、一本杉から5分程歩いたところにあり、黒河峠への近道の行き止まりを示しています。他に、苗木の寄進を受け、奥之院の参道に現在に至っている大杉林が並んだり、高野山の玄関口である大門の近くに立っています。